令和8年神奈川県公立高校入試展望

1. 令和8年度入試の概要と予想日程

神奈川県公立高校入試は、県内全公立高校(全日制、定時制、通信制)で実施される「共通選抜」を基本としています。令和7年度の日程を参考に、令和8年度の主な日程を以下のように予想します(正式発表は2025年5月上旬予定):

  • 出願期間:2026年1月下旬~2月初旬(例:1月27日~1月30日)
  • 志願変更期間:2026年2月初旬(例:2月3日~2月5日)
  • 学力検査:2026年2月中旬(例:2月13日)
  • 特色検査・面接:2026年2月中旬(例:2月13日、16日、17日)
  • 合格発表:2026年2月末(例:2月27日)
  • 二次募集:出願は3月初旬、検査は3月中旬、合格発表は3月中旬

全日制の学力検査は、国語、数学、英語、理科、社会の5教科で各50分、100点満点です。定時制では英語、国語、数学の3教科が基本で、特色検査を実施する学校では教科数が3~4教科に減ることがあります。


2. 選抜制度の特徴と予想される変更点

2.1 共通選抜と2段階選抜

神奈川県の入試は、共通選抜を通じて1回のみ実施され、合否判定は第1次選考(募集定員の90%)と第2次選考(残り10%)の2段階で行われます。第1次選考では、調査書(内申点)、学力検査、特色検査(実施校のみ)が評価され、第2次選考では調査書の「主体的に学習に取り組む態度」の評価が加わります。令和6年度から面接が共通選抜から廃止され、特色検査の一環として実施されるようになったため、この制度は令和8年度も継続すると予想されます。

2.2 内申点の計算

内申点は、中学2年生(45点満点)と中学3年生(90点満点、評定2倍)の9教科の評定を合計し、135点満点を100点に換算します。一部の学校では、特定の教科(最大3教科)を1~2倍に重点化する傾斜配点が採用されます。令和8年度でもこの計算方法は変更されない見込みですが、志望校ごとの配点比率や重点化教科の確認が重要です。

2.3 特色検査

特色検査は、自己表現検査、実技検査、面接の3種類で、学力向上進学重点校(横浜翠嵐、湘南、厚木、柏陽)とエントリー校(計18校)では共通問題・共通選択問題が使用されます。自己表現検査では、論理的思考力や表現力を測る記述問題や集団討論が課され、例えば「社会問題に対する自分の意見」を600~800字で記述する形式が想定されます。実技検査は、美術、音楽、スポーツなどの専門学科で実施されます。令和8年度の特色検査実施校や概要は、2025年6月中旬に発表予定です。

2.4 学力検査の傾向

学力検査は、思考力、判断力、表現力を重視する問題が特徴で、難度が高い傾向にあります。英語は長文読解やグラフ読み取り、数学は図形証明や応用問題、理科は実験データ分析、国語は複数資料の読み取り、社会は歴史・公民の融合問題が頻出です。令和7年度では社会がやや易化、英語が難化傾向だったため、令和8年度も教科ごとの難易度変動に注意が必要です。


3. 受験動向と倍率

3.1 募集定員と志願者数

令和7年度の全日制募集定員は40,058人で、前年比550人減でした。令和8年度も少子化や学校再編により、募集定員の微減が予想されます。公立中学校卒業予定者数は66,000人前後で推移し、志願者数は約46,000人、平均競争率は1.17倍程度と、全体的な競争は緩やかな状態が続く見込みです。ただし、横浜翠嵐(倍率1.5~2.0倍)や湘南などの進学重点校は高倍率が予想されます。

3.2 私立志向の影響

私立高校への志望者が増加傾向にあり、令和7年度では公立志願者が前年比で減少しました。この背景には、私立の学費補助制度や大学入試への対応力向上があります。令和8年度もこの傾向が続き、公立と私立の併願戦略が受験生にとって重要となるでしょう。

3.3 学校再編・統合

令和7年度で横浜旭陵、永谷、深沢が募集停止、二俣川看護福祉高校が普通科に改編されました。令和8年度以降も、臨海セミナーによると一部高校で統廃合や学科改編が予定されており、志望校選択に影響を与える可能性があります。受験生は、2025年夏以降の県教育委員会の発表を確認する必要があります。


4. 受験対策のポイント

4.1 学力検査対策

  • 英語:長文読解のスピード強化と「絵のストーリー説明」問題対策。過去問で時間配分を練習し、文法と表現力を磨く。
  • 数学:図形証明や応用問題に対応し、選択式問題の解法パターンを習得。低正答率問題(例:令和7年度数学問3(ウ)、正答率3.4%)に慣れる。
  • 国語:複数資料の読み取りや心情把握の記述問題対策。9分以内に長文を読み解くコツを身につける。
  • 理科・社会:実験問題(例:電解質の水溶液)や歴史・公民の融合問題を重点的に学習。基礎知識の定着が鍵。

4.2 内申点対策

中学3年生の評定が2倍で計算されるため、定期テストや授業態度を重視。「主体的に学習に取り組む態度」(A:3点、B:2点、C:1点)の評価が第2次選考で影響するので、積極的な学習姿勢を示すことが重要です。

4.3 特色検査対策

進学重点校を目指す場合、共通問題・共通選択問題の過去問を活用し、論理的思考や記述力を強化。集団討論や作文では、具体例を交えた説得力のある表現を練習。実技検査は、志望校の要求する技能(デッサン、スポーツ、楽器など)を早めに準備。

4.4 志願変更の戦略

志願変更期間(2月初旬)に倍率情報を確認し、保護者や塾と相談して戦略を立てる。11月下旬の進路希望調査を参考に、志望校の人気動向を把握。倍率に一喜一憂せず、模試結果を基に冷静な判断を。


5. 今後の展望

5.1 教育改革の深化

新学習指導要領に基づく「学びに向かう力」の評価が、特色検査や内申点で一層重視される見込みです。思考力・表現力を問う問題が増加し、暗記型学習では対応が難しくなるため、受験生は自分で考え、表現する習慣を早めに身につける必要があります。

5.2 デジタル化の進展

令和6年度から導入されたインターネット出願は、令和8年度も継続され、受検票印刷や合格発表もオンラインで行われます。今後、オンライン面接やAIを活用した評価の導入が検討される可能性があり、受験生はデジタルリテラシーの向上も求められるでしょう。

5.3 地域格差と進学機会

募集定員の削減や学校再編により、郊外エリアでの進学機会が制限される懸念があります。進学重点校が横浜・川崎に集中する中、県教育委員会はインクルーシブ教育や追検査の拡充を通じて、多様な受験生への対応を強化する方針です。


6. まとめ

令和8年度神奈川県公立高校入試は、共通選抜の1回実施、2段階選抜、特色検査の多様化が特徴です。募集定員の微減や私立志向の高まりを背景に、戦略的な志望校選択が求められます。学力検査の難度の高さや内申点の重要性を踏まえ、早めの対策が成功の鍵です。特に進学重点校を目指す受験生は、特色検査への準備が不可欠です。教育改革やデジタル化の進展を見据え、柔軟な学習姿勢で臨むことが、受験生にとって最適な道となるでしょう。

参考文献

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この記事を書いた人

瀬下淳志のアバター 瀬下淳志 KOSHIN学院塾長

神奈川県平塚市田村にある高校受験専門の集団個別指導の学習塾です。お勉強が苦手でもお断りしませんが『やる気』は大いに気にしています。